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確定拠出年金で見る「長期分散投資の落とし穴」

確定拠出年金(DC)は、老後資産形成の手段として広く活用されていますが、実は「投資力」を客観的に測ることができるツールでもあります。その指標となるのが、「拠出金額と総資産額の比率」です。今まで拠出した金額に対して、どれだけ資産が成長しているか。この比率を見ることで、どれだけ効率的に資産運用ができていたかを把握することができます。


下の表は、一定金額を継続的に各資産に拠出した場合の、拠出金額と総資産額の比率(総資産額÷拠出金額)を、2024年末時点での運用期間別に試算したものです。例えば、確定拠出年金の制度が開始された2001年の制度開始時点から拠出をしていた場合、運用期間は23年となります。


拠出金額と総資産額の比率(運用期間別

同じ期間運用していても、運用の仕方によって資産の増え方には大きな差が出ます。例えば、リスク分散の観点から「4資産均等型」(外国株式、外国債券、日本株式、日本債券に均等に投資)などに投資する方も多くいらっしゃいますが、2001年の制度開始時点から23年間この4資産均等型を採用していた場合、総資産額は元本の約2.4倍に増えたことになります。


一方で、全世界株式インデックスに投資していた場合、同じ期間で総資産額は元本の約4.5倍に増加しています。さらに、キャピタル世界株式ファンド(DC年金つみたて専用)のような良質なアクティブファンドでは、信託報酬等の費用控除後で約5.4倍とそれらを上回る試算結果となりました。つまり、分散投資が必ずしも最適解とは限らず、より高い成果を目指す戦略も有効であることがわかります。


株式投資は「リスクが高い」というイメージをお持ちの方も多いかと思います。確かに短期的には価格変動が大きく、元本割れのリスクもあります。しかし、確定拠出年金のように20年、30年という長期で運用する場合、株式のリスクは時間とともに相対的に低下していくという研究結果もあります。長期投資では、短期的な値動きに一喜一憂せず、時間を味方につけて資産を増やすことが可能です。


重要なのは、投資の時間軸なども考慮して自分のリスク許容度や投資スタンスに合った運用を行うことです。「一般的に信じられている選択が必ずしも最適とは限らない」—そんな気づきがあなたの“投資力”を引き出すきっかけになるかもしれません。


確定拠出年金という「自分で運用する制度」を通じて、今までの投資判断がどのような成果を生んだのかを振り返ることは、投資力を高める第一歩にもなります。先程のグラフは、ご自身の運用期間と比率を照らし合わせて頂く事で、今までの成果を図る目安として活用できます。拠出金と運用成果の比率を確認して、自分にとって最適な運用を見直すきっかけにするのはいかがでしょうか?